記憶と記録

雑記、詩、遺書

バイト先の女性

バイト先の女性のはなし。

 

初めましての挨拶をしたときから、なんとなく、「あ、このひとって...」という感覚があった。

常に何かをしていないと不安で、そわそわと動き回っている。ひとつの物事にはまっすぐになれるが、反対に多数の物事を同時並行することはできない。感情のコントロールが得意でなく、またそれが顔に出やすい。パニックになりがち。

 

ああ、どうしようかなと思っていた。でも、どうすることもできないな、とも思っていた。

ある人に対して、"この人は障害があるから"とか"そういう病気だから"と、ある意味レッテルのようなものを貼り付けるのって、どうなんだろう?

別に本人から「わたしはこういう人間なので、こういう対応をしてください」と言われたわけでもない。ただ、わたしが勝手に(この人は...)と考えただけのこと。相手はそれを望んでいないかもしれない。

 

本当なら本人に「どのような関わり方をすれば、あなたは働きやすいですか?」と尋ねられたら良いのだけど、それってもう(あなたは障害があるから...)と考えていることを認めるようなもので、相手自身も(この人はわたしのことを障害者と思っているな...)と感づくだろうし、それが結果的に相手を傷付けることに繋がるかもしれない。だからそんなこと安易に聞けなかった。

 

障害の有無の前に、まず、ひとりの人で、障害の有無に関わらず、その人を取り巻くすべての環境・要因がその人自身をつくっている。だからこそ、レッテル貼りなんてやめて「わたしからみえるその人自身」だけをみて、それに沿った対応をすればいい。それが理想なのかもしれない。

 

でも、うまく仕事をこなせないこと、一点に集中して周りを見失うこと、時折パニックになること、彼女のそういう一面を間近でみて、"これは怒れない""だってそれが彼女なりの精一杯だから"と思ってしまう自分がいた。(別に彼女じゃなくても、私はそもそも怒るという面倒なことはしないけど)

そう、わたしは。わたしはそうだけど。でも上司はちがう。そりゃあそうだ。スタッフによって態度をコロコロ変えてたらそれこそどうかと思う。けどさ、けどさ、彼女に対してキレている上司をみて、わたしはもう逃げ出したくなったんだよ。ねえ、違う、そうじゃないよ、でもそれが正しい教育?そうなの?でも、彼女はさ...って。

 

なるべく穏やかに 丁寧に関わろうと思って、実際そうしていた。でも、それが正しかったのかは、今となってはわからない。

 

彼女は今日を最後にバイトを辞めた。バイトに寝坊したから、ただそれだけのことで。ほとんどクビのような形で、彼女はバイトを去っていった。上司の怒りと、後輩の不安げな顔と、わたしのこのモヤモヤを残して。