テイクフリー人生
風化していく。
悲しみか、痛みか、後悔か、疑念か、怒りか、懐かしさか、温かさか、愛おしさか。
分からなかった感情に色が宿っていく。
爆発の後に小さな破片がそこかしこに散りばめられている。
ひとつ、ひとつ、手にしては涙し、手にしては涙し、大切なおもちゃを盗られた子どものように、大の大人が世間体を気にせず泣き喚いている。
世間体なんて気にしなくていい。
爆発。服は燃え、髪は焦げ、身体中が赤黒く焼けた。
あの瞬間の、あの時の感情。
最悪だと思っていたものの、それよりも下に更なる最悪があったこと。
大丈夫。
風化する。風化する。全てが薄れていく。
生きることの美しさを感じていたい。
寿命を全うすることの素晴らしさを伝えたい。
そして、生死を選ぶ権利を主張したい。
大丈夫。大丈夫だから、耐えて。
数週間、数ヶ月、数年。
まいにち、まいにち日を数えて。
いちにち、ふつか、みっか、よっか。
時間と共に、確実に、少しずつ、眼ではわからないミリ単位で、少しずつ、良い方向へ進んでいく。
信じるしかない。
愛したい記憶だけを掌の中で温めていて。